「法人成りした場合、個人が持っていた事業用資産はどうしたらいいのでしょう?」と同僚から質問を受けました。
「そんなの簿価で法人に売っちゃえばいいんですよ。」と即答したのですが、本当にそれだけでいいのか不安になってしまったので家に帰ってきてから少し調べてみました。
法人成りを検討すべきかなと買ってみたこの本。
個人事業者・自由職業者のためのQ&A法人化の税務と設立手続マニュアル
- 作者: 平野敦士,マネージメントリファイン
- 出版社/メーカー: 清文社
- 発売日: 2007/09
- メディア: 単行本
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この本によると、検討すべき引継ぎの形態は
- 現物出資
- 売却
- 贈与
- 賃貸
の4つなのだとか。
現物出資は手続きが煩雑そうですし、賃貸も後々まで個人の確定申告が必要になって面倒そうですが、意外と贈与は使えそうな感じ。
個人が法人に動産を贈与した場合の課税関係は
個人が、所得税の譲渡所得で「時価-簿価」に対して課税。
法人が、法人税で受贈益として時価に対して課税
となります。
動産の時価は、通常相続税の財産評価基本通達の129と130を準用して評価します。
129(一般動産の評価)
一般動産の価額は、原則として、調達価額に相当する金額によつて評価する。ただし、調達価額が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額(その動産と同種及び同規格の新品がない場合には、その動産と機能を同じくする動産のうちその動産に最も近似したものの新品の小売価額から、その動産の旧式の程度に応じ、その新品の小売価額の100分の30の範囲内において相当と認める金額を控除した金額とする。)から、取得の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は、1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によつて評価する。(昭41直資3−19改正)
130(償却費の額等の計算)
前項のただし書の償却費の額又は減価の額を計算する場合における耐用年数等については、次に掲げるところによる。(昭41直資3−19改正)
(1)耐用年数耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令に規定があるものにあつてはその耐用年数により、その他のものにあつては適宜見積つた耐用年数による。
(2)償却方法償却方法は、定率法による。
ですので、
通常は簿価>=時価になるので、個人側の譲渡所得はゼロになる計算。
一方法人側では、簿価相当額が受贈益になりますが、法人成りの場合基本的に給与で所得を分散して法人側を赤字にするのがセオリーなので、受贈益が出たところで納税額が増えるケースは少ないように思われます。
贈与の場合お金の動きがでてこないので、納税の心配がなければ法人への贈与という選択肢もありなのかもしれませんね。