タイトルの通りベテランの銀行員さんが初めて融資担当になった新人さん向けに、融資先の中小企業の決算書の見るべきポイントを簡潔明快に解説された入門書。
銀行員の経験はないですが私も以前債権管理部門の仕事についた時、先輩から「中小企業の決算書は大企業のそれとは見方が全然違うから。この本でしっかり勉強しておいてね。」ともらったこの本の初版本にお世話になったこともあり、今回改訂版が出たということで懐かしくてつい買ってしまいました。
- 作者: 久田友彦
- 出版社/メーカー: 銀行研修社
- 発売日: 2007/12
- メディア: 単行本
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「中小企業の決算書は税金計算のために作られた決算書」ということを前提に、架空資産や回収見込みのない資産をはがしていって審査に耐えうる決算書に修正していくテクニックを、勘定科目ごとに平易な言葉で解説されているので、すらすらと読み進めることができる様になっています。
かといって内容は結構本格的で、勘定科目別の粉飾の手口やよくある架空資産のパターンもコンパクトにしっかりまとめられていて、解説もかなり実戦的なものになっています。財務分析の本は数あれど、会計士監査を受けているようなある程度数字に信頼性があるという前提で書かれたものが多いかと思います。この本のように決算書の数字があまり信頼できないことを前提に、粉飾のパターンや見抜き方、水ぶくれ資産の是正方法がまとめられた本は、他に類書を見ないような気がします。やはり利用者が限られているからでしょうね。
会計事務所で働くようになって中小企業の決算書を利用する側から作成する側になりましたが、改めてこの本に書いてあることがしみじみと切実に実感できるようになりました。どうしても税金を正しく、そして可能な限り税金を減らすことばかりを考えて決算を組んでしまうので、所得の金額にあまり影響しない貸借対照表の資産性のチェックなどは、赤字の場合などどうしてもおろそかになってしまうのですよね。
もちろん税金計算のための決算書とはいえ妥当な所得計算のための期間損益計算のために作成している決算書なので、財産性がないという理由だけで資産をB/Sから落とすわけにはいきませんけど、財産性も資産性もない全くのゴミ資産は赤字でもできる限りB/Sから落としていかなければならないのでしょうね。実際なかなかそこまで手が回らないのですけど・・・。