固定資産について文章を書いていた際、ずいぶん前に「遊休減価償却資産の償却不足額は損金算入できるのか?」ということで揉めたことを、ふと思い出しました。
法人税法は、その33条で固定資産の評価損を計上できる場合を規定し、施行令の68条にその計上できる場合の事実を規定しています。
法人税法第33条 (資産の評価損の損金不算入等)
内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。2 内国法人の有する資産につき、(中略)政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、前項の規定にかかわらず、これらの評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
法人税法施行令第68条(資産の評価損の計上ができる場合)
法第33条第2項(特定の事実が生じた場合の資産の評価損の損金算入)に規定する政令で定める事実は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める事実とする。
◆3 固定資産 次に掲げる事実
ロ 当該資産が1年以上にわたり遊休状態にあること。
ということで、1年以上遊休状態にある固定資産については評価損の計上ができることになります。
評価損の計上額ですが、次の基本通達により定率法により償却したものとした場合における未償却残額と簿価との差額までの金額を、損金の額に算入することができます。
9−1−19(滅価償却資産の時価)
法人が、令第13条第1号から第7号まで《有形減価償却資産》に掲げる減価償却資産について次に掲げる規定を適用する場合において、当該資産の価額につき当該資産の再取得価額を基礎としてその取得の時からそれぞれ次に掲げる時まで旧定率法により償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額に相当する金額によっているときは、これを認める。
(1) 法第33条第2項《資産の評価換えによる評価損の損金算入》 当該事業年度終了の時
ここで気になるのが、次の基本通達です。
9−1−17(固定資産について評価損の計上ができない場合の例示)
法第33条第2項《資産の評価換えによる評価損の損金算入》の規定により固定資産の評価損が損金の額に算入されるのは、当該固定資産について令第68条第1項第3号《固定資産の評価損の計上ができる場合》に掲げる事実がある場合に限られるのであるから、当該固定資産の価額の低下が次のような事実に基づく場合には、法第33条第2項の規定の適用がないことに留意する。
(2)当該固定資産について償却を行わなかつたため償却不足額が生じていること。
ということで、償却を行っていなかったため償却不足がある場合には、評価損の計上ができないことを確認しています。
この通達の中に「令第68条第1項第3号《固定資産の評価損の計上ができる場合》に掲げる事実がある場合に限られる」という文言があるため、ここでいう「償却を行わなかったため償却不足額を生じている」というのは「当該資産を使用収益しながら、何らかの都合で償却費を計上しなかった場合」等に限られ、「1年以上遊休状態にある場合」にはこの通達のシバリから外れることになります。
というわけで結論としては「1年以上遊休状態にある減価償却資産については、償却不足額を評価損として損金算入できる。」ということになります。
決算対策を考える際、手元に遊休減価償却資産がある場合には、節税方法として一考する価値ありです。(本当に遊休状態にあったかどうかは、きちんと確認しておく必要があります。)
ただ実際は遊休固定資産であっても、下記の通達により継続して償却を行っているものも多いため、評価損を計上できる場合は意外と少ないかもしれませんね(笑)。
7−1−3(稼働休止資産)
稼働を休止している資産であつても、その休止期間中必要な維持補修が行われており、いつでも稼働し得る状態にあるものについては、減価償却資産に該当するものとする。