消費税の世界では有名なクマオー先生の次の本を読みました。
- 作者: 熊王征秀
- 出版社/メーカー: ぎょうせい
- 発売日: 2008/06/06
- メディア: 単行本
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の区分で、さまざまな事例が紹介されています。
特にページを割いていろいろなパターンが紹介されていたのが、居住用賃貸不動産を建築したり購入した場合の仕入税額控除の話でした。
居住用の賃貸不動産は、賃貸収入が非課税売り上げになってしまうので、通常は取得に係る消費税は仕入税額控除の対象にすることができません。仕入税額控除の意義を考えるとそれが筋なのですが、しかし何らかの方法で課税売上を作ると控除の対象となり、課税売上割合を上げれば上げるほど控除できる金額は大きくなってきます。
というわけでこの本の中でも、居住用不動産の入居者の募集期間を調整したり、駐車場を併設して課税売上を作ったり、用途転用で無理やり課税売上を作って居住用賃貸不動産で還付を受けるなどといった事例と、それにより想定されるトラブルとその回避策が何件も紹介されています。
色々思いつくなあと感心して読んでいたのですが、そのなかでも特にひどすぎる事例として自販機の設置による還付の事例が紹介されています。
どういう事例かというと
たとえば、いままで事業をしていなかった個人が、建築費が税抜で5,000万円の居住用アパートを12月に建てた場合。
そのままでは建築にかかる消費税250万円は、払ってしまっておしまいということになります。
ところが上記の場合で、居住者の募集を来年に回した上で、課税事業者を選択して12月にアパートの前にでも月1万円程度の自動販売機を設置して稼働させるとします。
するとあら不思議。今年の課税売上は1万円で課税売上割合は100%になるので、アパートの消費税250万円をまるまる控除できることになってしまいます。
結果、売上1万円にかかる消費税500円から250万円を引いた、2,499,500円が還付されてしまうことになってしまいます。
でそのあと、課税売上割合が著しく変動した場合の規定の適用を逃れるため、簡易課税を選択してめでたしめでたしという次第になります。
この手口は以前より「いくらなんでもひどすぎる」ということで話題になっていましたが、個人的には自動販売機を数台設定することが、消費税の要件である「事業として」という要件を満たすのかなあという疑問をかねがね持っています。
消費税の基本通達では「事業として」の意義として、その行為が「反復・継続・独立」という性格を持っていることが要件とされています。
自動販売機を50台も100台も設置していれば、自販機のマージンだけで生活していくことも可能ですが、1台、2台であればそうもいきません。また自販機の管理・メンテナンスも業者任せになることが多く、自分で維持管理を行うということはほとんどないことが多いうえ、1台、2台の自販機の設置であれば撤去を行うことも簡単です。
そういうことを考えると、自販機を1台、2台置くことは、「事業として」という要件を満たしていると、果たして胸を張っていえることなのでしょうか?
クマオー先生はこの項目に「自動販売機撲滅作戦!?」というタイトルをつけて否定的な意見を書いておられますが、私もおおむねクマオー先生の意見に賛成です(^^;。