- 作者: 石田昌宏
- 出版社/メーカー: ビジネス教育出版社
- 発売日: 2008/12
- メディア: 単行本
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このシリーズは今回が3作目ですが、どの本も金融機関の融資担当者向けに中小企業の財務分析の方法を紹介したうえで、ケーススタディー方式でトレーニングしていく形になっています。
一口に財務分析といっても利害関係者が多岐にわたる大会社と違って、代表者、税務署、銀行(取引先)程度の利害関係者を想定しなくていい中小企業では、その方法は大会社のそれと全然違ってきます。その中でも3冊目のこの本は、特に中小企業の粉飾決算に的を絞って書かれています。
はしがきの、
中小企業の粉飾決算であれば、
「9割以上の確率で粉飾を見抜くことができる。」
「25%以内の誤差で、粉飾額を推定できる。」
「決算書、科目内訳書、税務申告書があれば、1社の分析には5〜10分あれば十分」
という、自信満々な著者の言葉がいい感じです。
ちなみに本書の章立ては以下の様になっているのですが、特に「粉飾決算を体験してみよう」という章が斬新で面白いところでした。
事例をもとに「あなたが中小企業の社長であれば、どこから粉飾したくなるでしょうか?」という感じで、比較的ライトな方法から、完全にダメな行為までを順位をつけて紹介しています。
私自身会計事務所で働くようになってからしみじみと実感していることですが、決算書を作成する側が「なぜ粉飾をするのか?」、「どこが粉飾しやすいか?」という『粉飾のベクトル』が分かれば、自然におかしな点が見えてくるようになります。
その点この本は、粉飾の手順を追っていくという方法で、粉飾をやってしまう経緯を疑似体験させるところが面白いところです。著者が会計士さんだけあって、利用する側も一度は作成する側の視点を持つことを大事になさっているのでしょうね。
本書の中の「粉飾の善悪」というコラムで、著者が読者である融資担当者に対して
「中小企業の決算書は粉飾されて当たり前なので、『粉飾なんてとんでもない!』という姿勢ではなく、『どのぐらい粉飾してますか?』と軽い気持ちで質問できる関係ぐらいの方が望ましい・・・。」
といった旨のことを書いておられるところに、そんな思いを垣間見ることができました。