大分前に消費税の簡易課税制度の話をしていた際に、卸売業と小売業との区分について「先方が法人であっても最終消費者であれば、「小売業」に該当して第2種事業になるのでは?」という話題が出ることがありました。
一般的に考えれば、確かに百貨店の販売先が法人であっても個人であっても事業としては「小売業」に該当します。しかしその一般常識が通用しないのが、簡易課税制度の面倒なところです。
消費税法の条文上は「性質及び形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業」が卸売業たる第一種事業に該当し、それ以外の「性質及び形状を変更しないで販売する事業」が小売業たる第二種事業に該当するという文言になっているため、販売先が法人であれば最終消費者であっても卸売業に該当することになります。
消費税法施行令第57条(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)
5 前各項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
◆1 第一種事業 卸売業をいう。
◆2 第二種事業 小売業をいう。
6 前項第1号の卸売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業をいうものとし、同項第2号の小売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業で同項第1号に掲げる事業以外のものをいうものとする。
この事業区分の話がでると、昔消費税法の勉強をしていたころ講師の先生にこう教わったことを思い出します。
「トンカツを、揚げずにパン粉をつけただけで、法人に売ったら『卸売業』で『第一種事業』」
「トンカツを、揚げずにパン粉をつけただけで、個人に売ったら『小売業』で『第二種事業』」
「トンカツを、揚げてテイクアウトで売ったら性質が変わるので、『製造業』で『第三種事業』」
「トンカツを、揚げて売って店の中で食べさせたら、『飲食業』で『第四種事業』」
「トンカツを揚げるのが製造業??」と当時は言葉とのギャップに奇異な感じを受けたものですが、条文上の意義がそうであれば一般常識は脇においておいて考える必要があるんですよね。