前回の日記に引き続き、相続絡みのお話。
被相続人が営んでいた事業を相続人が引き継ぐ場合に、その事業が未分割のまま年をまたいで翌年に分割が確定したとき、相続人の消費税の納税義務はどうなるのだろうと悩むことがありました。
被相続人の事業を承継した場合、消費税法は第10条で納税義務の免除の特例を定めています。
例え相続人の納税義務がなくとも、第1項で相続年は被相続人の基準期間の課税売上高が1,000万円超であれば納税義務有り、第2項で相続年の翌年と翌々年は被相続人と自分の基準期間における課税売上高の合計額が1,000万円超であれば納税義務有りとしています。
そして基本通達1−5−5で、未分割の場合の被相続人の基準期間の課税売上高は、法定相続分をかけて計算するとされています。
消費税法第10条 (相続があつた場合の納税義務の免除の特例)
その年において相続があつた場合において、その年の基準期間における課税売上高が1000万円以下である相続人(第9条第4項の規定による届出書の提出により、又は前条第1項の規定により消費税を納める義務が免除されない相続人を除く。以下この項及び次項において同じ。) が、当該基準期間における課税売上高が1000万円を超える被相続人の事業を承継したときは、当該相続人の当該相続のあつた日の翌日からその年12月31日までの間における課税資産の譲渡等については、第9条第1項本文の規定は、適用しない。
2 その年の前年又は前々年において相続により被相続人の事業を承継した相続人のその年の基準期間における課税売上高が1000万円以下である場合において、当該相続人の当該基準期間における課税売上高と当該相続に係る被相続人の当該基準期間における課税売上高との合計額が1000万円を超えるときは、当該相続人のその年における課税資産の譲渡等については、第9条第1項本文の規定は、適用しない。
消費税法基本通達1−5−5(共同相続の場合の納税義務)
法第10条第1項又は第2項《相続があった場合の納税義務の免除の特例》の規定を適用する場合において、2以上の相続人があるときには、相続財産の分割が実行されるまでの間は被相続人の事業を承継する相続人は確定しないことから、各相続人が共同して被相続人の事業を承継したものとして取り扱う。この場合において、各相続人のその課税期間に係る基準期間における課税売上高は、当該被相続人の基準期間における課税売上高に各相続人の民法第900条各号《法定相続分》(同法第901条《代襲相続人の相続分》から第903条《特別受益者の相続分》までの規定の適用を受ける場合には、これらの各条)に規定する相続分に応じた割合を乗じた金額とする。
ここで悩んでしまうのは、法定相続分で按分した課税売上高だと免税なのに、遺産分割確定後の課税売上高だと課税事業者になってしまう場合、その納税義務の判定のタイミングはいつになるのかなということです。
例えば、H23年とH24年の課税売上が2,400万円の事業を営んでいた被相続人がH25年に死亡して、相続人は課税売上高がゼロの子供3人であった場合・・・。
H25年中には遺産分割が確定せず、H26年の6月に遺産分割が確定した場合、H26年の各人の基準期間の課税売上高と納税義務はいったいどうなるのでしょう?
民法は909条で遺産分割は相続時点まで遡って効力を生じるが、第三者の権利を害することができないとされています。
民法第909条
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
H25年は確定申告が終わっているので第三者の権利を害することができないということで、相続時まで遡って申告をやり直す必要がない。
しかしH26年はどうなるのか・・・?条文を読んでも分からないなと思っていたら、東京国税局の文書回答事例がありました。
前年に相続があった場合の共同相続人の消費税の納税義務の判定について|東京国税局|国税庁
これによると、課税事業者に該当するかどうか事前に予知しておく必要があるので、相続年と同様法定相続分で計算した課税売上高で判定してOKということですね。
東京税理士会の会報でも、前年12月31日時点の現況で判断することについて当局に照会したところOKでしたという記事がありますね。
http://www.tokyozeirishikai.or.jp/common/pdf/tax_accuntant/bulletin/2009/dec_04.pdf
税理士試験で消費税法の勉強をしていた時、相続の際の納税義務の判定の問題はありましたが、こんなケースの記憶がないので、そんな問題はなかったのでしょうね。
遺産分割が年をまたぐか否かで納税義務が変わるのもなんだかなあ・・・。消費税、怖い税金です。